独断と偏見に満ちた“パレスチナ読書記”― その1 ―

 

Hadi Shamieh (バダウィ・キャンプ)の里親 岡本達思

運営委員会での「マルハバ」編集会議で、その場で思いついた企画を口にしたら、その責任を取らされてパレスチナ関連図書の紹介をする羽目になった。今後、マイペースで書かせていただきますので、しばしお付き合いください。

漫画との出会いは、いつだったろうか? 「ちびくろさんぼ」や「鉄腕アトム」「鉄人28号」「赤胴鈴之助」・・・と書くと年齢がバレてしまうが、それに続くまるで夢のような世界のウォルトディズニーのアニメや、10円玉を3つか4つ握りしめてワクワクしながら書店に買いに行った「少年マガジン」や「少年サンデー」あたりが、本格的な漫画との出会いであった。

その後、私は漫画とは遠ざかるが、世の中は一大漫画ブームとなって、子供だけでなく大人までが漫画の虜になり、今の時代の携帯電話と同様に通勤・通学電車の中は漫画を読む人々で一杯になった。サブカルチャーでありながらも多くの人々の人生に楽しみや喜びや悲しみはもとより、政治や経済やその他の情報を与え続けているのである。

なんだか、前置きが長くなってしまったが、ここに取り上げる3冊の本は、いずれもパレスチナの人々の抑圧された生活や歴史が描かれた漫画なので、相成った次第である。

 

さて、その1冊目は、1990年前後のイスラエルによる占領に対してパレスチナの人々が抵抗した第一次インティファーダについての漫画『パレスチナ』だ。

作者のアメリカ人ジョー・サッコは、1991-1992年の冬の2ヶ月をその取材でヨルダン川西岸地区やガザ地区を過ごし、そこで出会った人々、拷問を受けたパレスチナ人から石を投げる少年、観光気分のイスラエル人まで、様々なインタビューを試み描いた作品である。この作品を讃えたエドワード・サイードは「ほとんど恐ろしいような正確さと、同時にやさしさをもって描きあげられた」(序文より)と絶賛。独特の画風で一人ひとりのディティールを極めて繊細に描いた作品が、アメリカはもとより世界中で人気コミックとして愛されたことが頷ける。

 

■『パレスチナ』 発行:株式会社いそっぷ社/定価=1800円+税

 

 

 

2冊目は、そのジョー・サッコに『パレスチナ』を描く力を与えたというパレスチナ人の風刺漫画家ナージー・アル・アリーの作品『パレスチナに生まれて』。イスラエルの冷酷さ、偽善的なアメリカ、私腹を肥やすアラブの支配層など、パレスチナ社会に渦巻く様々な問題に対するパレスチナ人の怒りを、ハンダラという少年の目を通して、静かに、しかし辛らつに新聞の1コマ漫画の体裁で描き綴った作品である。

 作者のナージー・アル・アリーは、漫画という人々の心に訴える武器でパレスチナ人を抑圧する側を糾弾したため1987年にロンドンで暗殺されるが、彼の作品の上で生きるハンダラは今もなおパレスチナ人の間で英雄として生き続けているという。

 

■『パレスチナに生まれて』 発行:いそっぷ社/定価=1600円+税 

 

 

3冊目に紹介するのは、日本人の山井教雄という異色の経歴を持つ作者が描いた『まんがパレスチナ問題』だ。とてもとても複雑といわれるパレスチナ問題、宗教や民族という日本人にはなじみにくい問題、それこそ旧約聖書の時代から21世紀の今までのパレスチナ問題を、ユダヤ人のニッシムとパレスチナ人のアリという二人の少年とエルサレムの猫の視点で、やさしくガイドしてくれる。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の背景から十字軍、ホロコースト、イスラエル建国、中東戦争、インティファーダ、湾岸戦争、9.11まで・・・、細かなディティールについては異論を唱える方もいるかもしれないが、その試みは評価しても余りある。児童にもお勧めの一冊と言えよう。

 

 

■『まんがパレスチナ問題』 発行:株式会社講談社/定価=740円+税